尿道閉塞(にょうどうへいそく)
更新日 2021.3.1
こんにちは。ブログをなかなか更新できずにすみません。
「何度もトイレにいっている」、「トイレにこもっている」という症状の猫さんが頻繁に来院されます。このような症状の際、場合によっては、その猫ちゃんは生命の危機にさらされていることがあります。特に雄の猫ちゃんでは、陰茎(おちんちん)に結石(臓器の中にできる石のような固い物)や細胞の塊などがつまってしまい、尿が出せなくなっている「尿道閉塞」に陥っていることが少なくありません。尿が出せない状態が長引くと、腎臓へ激しい負担がかかり、腎臓の障害が出てきます。そのまま放置すると、猫ちゃんは「尿毒症」と呼ばれる状態になり、亡くなってしまいます。このような状態に陥った猫ちゃんは、なるべく早く治療が必要です。
写真は、陰茎の先端につまっていた結石です。大きさが1mmもないくらいですが、たったこれだけの大きさのものが雄猫の陰茎につまってしまい、尿が出せなくなるのです。私も男なので、こんなものがつまって尿が出せなくなったら、痛いし苦しいだろうなと、考えただけでぞっとしますね…
また、猫ちゃんだけでなくワンちゃんにも同様のことが起こります。このような症状がみられたら、早めにご相談くださいね。
当院からのお知らせ
更新日 2020.9.1
なかなか、ブログが更新できずにすみません。残暑が厳しいので、ワンちゃんもネコちゃんも、飼い主さんも熱中症にはご注意ください。あまりの暑さのため、道路のアスファルトも高温になっています。その高温になったアスファルトを散歩中のワンちゃんが踏むと、パッド(足の裏の肉球のところ)を火傷して、皮膚がめくれてしまうことがあります。アスファルトがあまり高温になっていない早朝や夕暮れに散歩してあげたいですね。
ところで当院よりお知らせが、2点あります。
1. 令和2年9月1日(火)より、平日の診療時間を午後7時までとさせていただきます。
2. 令和2年10月1日より、ロイヤルカナンのフードが全品値上げになります。
ご容赦ください。
重要なスケーリング
更新日 2020.3.31
スケーリングとは、器具を使って歯石等を除去することです。
家族として大切にされるようになった犬や猫の寿命は、予防が普及したこともあり、近年ずいぶんと延びてきました。喜ばしい限りですが、高齢化した犬や猫には新たな病気も付随してきます。高齢化とともに病気が多くなるのは人間と同じですが、人間と大きく異なり意外と気付かれないで重症化するのは、口内のトラブルです。
特に高齢の犬に多いのですが、歯周病が原因で頬の皮膚が腫れたり部分的に頬の皮膚に穴があいたりする(根尖(こんせん)周囲(しゅうい)病巣(びょうそう))、くしゃみが出たり鼻血や鼻汁が出たりする(口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう))、口臭が強くなる等の症状が見られます。歯磨きの難しい犬や猫の口内は細菌でいっぱいです。その菌はやがて歯の根っこを腐らせ、顎や鼻の骨までも溶かしていきます。さらに恐ろしいのは、この菌が内臓を侵して重篤な病気を引き起こす可能性があることです。歯の色が茶色くなったり口臭が気になりだしたりしたら、まずは動物病院でスケーリングの相談をしてみましょう。歯を丈夫に保つことは人間と同様、犬も猫も健康の基本ですから。
写真は、歯周病の激しいワンちゃんの口の中の様子です。歯や歯肉にびっしり歯垢、歯石がついていますね。(庄東タイムスより一部改変)
義理がたい犬、学習する猫
更新日 2020.3.12
我が家の一才になる雌の柴犬は、私の姿を見つけると駆け寄ってきて強烈に喜びをアピールします。先日、私が撫でていると、急に庭の一角に駆け去り穴を掘り始めました。喜々として戻ると私の手のひらに何かをポトリ。何とそれは、干からびた蝉の亡骸でした。実は、口に入る物は何でも飲み込むという食い意地の張った犬で困っているのですが、自分が大切に埋めておいた御馳走を私に贈ってくれたようです。後で家族に話すと、まだ誰もそんなプレゼントをされていないと妬むことしきり。
また、五才になる我が家の雌の猫は、どんなに眠りこけていてもテレビに生き物が映ると耳をピンと立て、画面の前に馳せ参じます。最も長く視聴するのは鳥。次は子猫、成猫と順が決まっています。子猫だった頃は、テレビの映像に呼びかけたり、裏側に回って動物を探したりしていましたが、現在はテレビ視聴のみ。映像の動物がテレビの中から出てこないことを学習し、現在はお座りをしてテレビに見入るのをもっぱらとしています。これが、ほっとする一時を与えてくれる私の大切な家族です。(2019年10月の庄東タイムスの記事より)
お尻から赤いものが出ている…
更新日 2019.12.20
今回ご紹介するのは、「直腸脱(ちょくちょうだつ)」という病気になったワンちゃんです。このワンちゃんは、「お尻から、何か赤いものが出て腫れている」ということで来院されました。「下痢をした後に、こんなふうになってしまった」とのこと。赤いものは直腸の粘膜のことで、外に向けて粘膜が脱出してそのように見えているのです。この状態のことを「直腸脱」と呼びます。主に、下痢をした若いワンちゃんやネコちゃんに、二次的に発生します。早めに治療しなければ、脱出した腸の粘膜が壊死(えし:組織が死んでしまうこと)してきて、治療が難しくなります。ワンちゃん、ネコちゃんがこのような状態になった時、速やかに獣医師にご相談ください。早めに治療して、ワンちゃん、ネコちゃんの負担を軽くしてあげたいですね。
「膝蓋骨内方脱臼」について
更新日 2019.11.28
こんにちは。今回は、膝関節に起きる病気「膝蓋骨(しつがいこつ)内方脱臼」について、書きたいと思います。
「膝にお皿の骨がある」ということを聞いたことがありませんか?膝蓋骨は、膝に存在するお皿のような形をした骨のことで、人間にもワンちゃん、ネコちゃんにもあります。この膝蓋骨が、大腿骨(太ももの骨)の溝から内側に向けてずれてしまうのが「膝蓋骨内方脱臼」です。膝蓋骨が脱臼すると、膝蓋骨の内側の軟骨がすり減って、強い痛みを生じるため、後ろ足をケンケンして歩くようになるのです。特に若い小型、中型犬に目立つ病気です。若いワンちゃんが後ろ足をケンケンする時は、この病気が隠れているかもしれません。
写真の柴犬さんも後ろ足をケンケンするということで来院されました。
この病気の根本的な解決法は外科手術のみです。若い頃にこの病気による症状がある場合、積極的な治療が望ましいと言われています。
ワンニャンのお留守番
更新日 2019.10.20
めったに家を空けない両親が、一泊二日の旅行に出かける機会がありました。室内にいる雌猫と車庫にいる雌犬のことを気にかけながらいざ、旅へ。
一日目。夜になると猫は父母を探している様子でやや元気なし。仕方なしに他の家族にすり寄ってくるも投げやり感が見え見え。犬も玄関が開く度にじっと父母を待っているような印象を受けるものの、散歩や食事はいつも通り。
二日目。犬の様子に変わりはなし。一方、猫の方は目がすわり、表情も乏しく声も出さず。普段なら呼びかけにすぐ応答し、ゲージから飛び出してくるはずがゲージの中段で寝そべったままの無気力、無関心、無愛想。いつもの愛くるしさはどこへ?トイレの砂も蹴散らし、怒りも半端でないような…。
英語の「Queen(クイーン)」という単語には「女王」の他に「雌猫」という意味があります。我が家の女王様は、私達ではお気に召さないご様子。ところが、両親の帰宅と同時にいつもの愛くるしい猫に急変貌。「雌猫は、やはり女王様かも…」と思わせる留守番にまつわる出来事でした。やれやれ…。(2019年8月の庄東タイムスの記事より)
レッグ-カルベ-ペルテス病(大腿骨頭無血管性壊死)
更新日 2019.7.21
こんにちは。若い小型犬(トイ・プードル、テリア種など)が、後ろ足をケンケンして痛そうにしている時は、膝だけでなく、股関節の病気も鑑別すべき病気として考えなくてはなりません。
ご紹介するのは、股関節の病気の一つである「レッグ-カルベ-ペルテス病」です。簡単にいうと、太ももの骨(大腿骨)の頭の部分に血が通わなくなって、骨の頭やくびれの部分が変形して強い痛みを引き起こす病気です。
マダニとSFTS(重症熱性血小板減少症候群)
更新日 2019.7.1
こんにちは。梅雨入りして雨が多いですね。雨あがりの晴れた日には、マダニの活動がさかんになります。ご存知の方も多いですが、マダニは草むらや芝生などに潜んでおり、ワンちゃんやネコちゃんの皮膚にくっついて吸血します。人間も畑や山などにいる際に、マダニに刺されることがあります。
近年になって、マダニに刺された時に、ウイルスをうつされ発症する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」という病気が全国的に増えています。ヒトでは死亡率が30%くらいあり話題になっていますが、ワンちゃんもネコちゃんも同様に発症し、重症化すると死に至ることがあります。去年、獣医師の方が猫を診察した時に、猫の体液からこの病気に感染したという報告がありました。この猫さんは、外に出して飼われており、マダニの予防・駆除はしていなかったようです。同業者が、診察していた動物から病気をうつされるというのは他人事ではなく、恐ろしいことです。
富山県ではまだ人や動物に感染したという報告がないのですが、このSFTSウイルスの存在は確認されています。お隣の石川県では、人への感染報告があります。人も動物も命に関わる感染症になる危険性があるため、外でお散歩するワンちゃん、外に出しておられるネコちゃんには、積極的にマダニの駆除・予防をしていただきたいです。このマダニから媒介される感染症が今以上に増えて来たら、マダニ予防をしていないワンちゃん、ネコちゃんは動物病院で診察できません、ペットホテルで預かれません、トリミングできません…なんて時代がくるかもしれません。
写真は、ワンちゃんの不妊手術をしようとして毛刈りしていたら、お腹の皮膚にくっついていたマダニの写真です。毛刈りで偶然マダニを発見しましたが、動物は毛が深く、マダニの寄生をなかなか発見できないこともあります。ですからなおのこと、外に出るワンちゃん、ネコちゃんはマダニの予防をしてあげたいですね。マダニの予防をされたい方は、動物病院にご相談ください。
新しい家族
更新日 2019.3.17
こんにちは。一ヶ月ほど前になりますが、我が家に新しい家族を迎えました。女の子の柴犬です。以前飼っていたワンコが亡くなってから一年以上経ち、たまたま、この子に出会って迎え入れることになりました。
わりと長い期間、ペットショップにいたためなのか、とてもおとなしいワンコです。写真は新しい犬小屋を用意した時のものですが、ちょっと緊張気味?です。今ではすっかり慣れて小屋の中でリラックスしています。
生後6ヶ月を過ぎたため、不妊手術も済ませました。そのせいかどうか分かりませんが、自分の顔を見ておしっこをチビリました…飼い主としてはショックです。せつないなあ…
これから、この子の成長を見守っていきたいと思います。これからもよろしくね。
今日のネコちゃん~雑種編~
更新日 2019.2.28
今回は、うちの猫の紹介です。どこにでもいるようなキジトラ柄の雑種猫です。「キジトラ」というのは、猫の種類のことではなく、模様のことであり「ブラウンタビー(茶色の縞模様)」とも言われます。ちなみに「サバトラ」と呼ばれる模様は、魚のサバのようなグレーの縞模様をしているので、そう呼ばれているようです。キジなのに虎(トラ)、サバなのにトラって変なの…と思うのは自分だけでしょうか?
うちの猫は障子を破り、室内を駆け回っています。やりたい放題の女王様です(笑)。障子が破られては、その度に家族が貼り直していましたが、ついにあきらめました…そんな猫でも、自分の家の猫はかわいいと思えてしまうのですね。
今日のネコちゃん~エキゾチックショートヘア編~
更新日 2018.12.31
こんにちは。今回は猫さんの紹介です。わりと珍しいと思われる猫「エキゾチックショートヘア」という品種について。「エキゾチック」という単語は「異国風の」という意味ですね。
アメリカが原産国であり、「ペルシャ」猫が先祖です。簡単に言うとペルシャが短毛になったような猫さんです。特徴は、鼻が短く耳が離れていて丸い頭、太く短い足ですね。性格は、穏やかで落ち着いている子が多いようです。
写真の「エキゾチックショートヘア」さん、当院にやって来ると、自ら診察台に飛び乗り、そのまま診察台の上で眼を閉じて休み始めます。多くの猫さんは、病院に来ると、怖がったり、警戒したりするのですが、この子はリラックスし始めるという…「よきにはからえ…」と言わんばかりの貫禄…大物の予感がします(笑)。
まぶたにイボがある…
更新日 2018.11.10
こんにちは。今回は久々に病気のお話です。
このワンちゃん、「まぶたにイボがある…」とのことで来られました。右目の上のまぶた(上眼げん)にピンク色のしこりが認められます。
高齢のワンちゃんのまぶたに、このようなしこりが出た場合、まぶた(眼げん)の腫瘍が最も疑われます。このまぶたの腫瘍、ほうっておくと何がまずいかというと、眼球に刺激を与えたり傷をつけたりすることがあります。そのような場合は、早めに手術して切除してしまうことを勧めます。まぶたの腫瘍は小さければ簡単な手術で済みますが、かなり大きくなってから切除しようとするとワンちゃんへの負担が大きくなるので早めに取ってあげたいですね。
*下のボタンをクリックすると、当院で行った手術前・手術後の写真が出ます。
苦手な方はご覧にならないでください。
今日のワンちゃん ~トイ・プードル編~
更新日 2018.10.01
こんにちは。今回も、当院に来てくれたワンちゃんについてご紹介します。毛がフサフサのかわいらしいトイ・プードルさん(♀)です。このプードルさん、診察中には「もっと私にかまって」と言わんばかりにスタッフにあまえてきます。病院が恐くないのかな?診察する身としては、大変ありがたいのですが(笑)。
トイ・プードルの犬種としての性格は、「賢くて遊び好き」と言われています。このワンちゃんもまさにそんな感じのトイ・プードルさんです。飼い主さんは、きっと可愛くてしかたないでしょうね。
ちなみに現在、トイ・プードルは国内で一番の人気犬種です。ペットショップでもこの犬種を見ないところはないのでは?と思います。私が獣医師になった10年以上前は、ミニチュア・ダックスフンドが一番人気でしたが、いつの頃からかトイ・プードルが一番人気に躍り出てその座を守っています。人なつっこくて甘えん坊なところ、毛がふさふさでお人形さんのような見た目が愛らしくて人気が高まってきたのでしょうか?
今日のワンちゃん ~柴犬編~
更新日 2018.09.01
こんにちは。当院に来てくれているワンちゃんに写真を撮らせてもらいました。ご覧の通り、かわいい柴犬さんです。
今回は柴犬という犬種について簡単に紹介したいと思います。 柴犬は、古来より日本で飼育されてきた代表的な犬種です。意外と知られていませんが、天然記念物に指定されています。現在も人気犬種です。飼い主に従順な性格といわれていますが、警戒心が強く、神経質な面もあり、番犬に向いているという人もいます。また、残念ながら、神経質過ぎて他人に対して攻撃的な柴犬さんもいます…
ところが、写真の柴犬さん(♀)はとっても穏やかで、診察している私が癒される優しいワンちゃんです。そして当院が休みの日も、病院の入り口でスタッフが出てくるのを待っていることがあるという、動物病院からすればとてもありがたいワンちゃんです(多くのワンちゃんは、病院に来ると怖がるのですが…)。怖がりなワンちゃん、ネコちゃんもその子の個性だと思うのですが、ついつい、この子みたいに動物病院好きになってくれるといいな~と思ってしまいます。
猛暑と熱中症
更新日 2018.08.19
更新がひさしぶりになり、すみません。何名かの方からご指摘をいただいたので、これからはマメに更新したいと思います。
当院の駐車場のフェンスにアサガオが毎年一面に咲くのですが、今年は猛暑のせいなのか全然咲かないですね。写真のように、一輪咲くのが精一杯のようです(水まきはしっかりしているのですが…)。
猛暑といえば、ワンちゃん、ネコちゃんの熱中症にご注意ください。ワンちゃん、ネコちゃんが熱中症を発症した場合、病院に担ぎ込まれた時点で、そのほとんどが既に重症です。死亡率は50%と言われています。その予防としては、散歩は涼しい時間帯をねらって行ってください。また、室内を涼しくして、水分を十分にとらせてください。水をなかなか飲まないワンちゃん、ネコちゃんには缶詰などのウェットフードを与えるのも良いでしょう。
多いですよ、尿石症
更新日 2018.1.8
2018年が始まりました。ずいぶん寒くなりましたが、寒くなると特に、猫の尿石症が増える印象があります。そこで昨年末に書いたこの記事を載せようと思います。
「あれ、どうしたのかな」と思うほど、今年多く見られた症例は尿石症です。尿石とは、膀胱や尿道内にできた結石のことです。尿石症の主な症状は、頻尿、血尿、排尿時に力む、トイレにこもる、などです。原因は、過剰なミネラル(カルシウム、リン、マグネシウムなど)の摂取、尿のpHの変化、水分摂取量の不足などが考えられます。尿石症の主な治療には、①尿石症管理用の食事による継続治療、②手術による摘出(尿石が溶解しない場合)があります。
尿石症は犬猫どちらにも発症するので、日頃から注意深く観察し、早期に発見して治療に努めることが大切です。もし、発症した場合は、次のことに注意してください。①新鮮できれいな水道水を与える(井戸水は不適切)、②水分を含んだ食事(缶詰など)を与える、③トイレを清潔にして排尿を我慢させない、などです。
(庄東タイムス 平成29年12月29日号より抜粋)
ちなみに写真に写っているピンセットの先端にある白い物体が「尿石(尿路結石)」です。たった1mm程の大きさですが、この尿石がオス猫さんのおちんちんの先に詰まっており、おしっこが全く出せなくなっていました。自分も男ですので、こんなものが詰まったらと思うと、恐ろしいですね…
ワンちゃんも、ネコちゃんも上記のような症状が見られたら早めにご相談ください。
椎間板(ついかんばん)ヘルニア
更新日 2017.12.07
こんにちは。「椎間板ヘルニア」という病気をご存知でしょうか?人間にも同じ病気があるので、名前を聞いたことがある方は多いと思います。 椎間板とは、ひとつひとつの背骨の間に存在する円形の軟骨のことで、背骨を支える役割をしています。背骨の中には脊髄(せきずい)といって、脳から続く大事な神経があります。ある日突然、椎間板の中から椎間板物質といわれる物が、神経に向けて飛び出し、神経を圧迫するのが「椎間板ヘルニア」と呼ばれる病気です。首のあたりに起こる場合と、胸から腰の辺りにかけて起こる場合があります。
神経が圧迫を受けるとワンちゃんに痛みが出ますが、症状の重たい場合、足が麻痺して立てなくなったり、自力でおしっこを出せなくなったりします。 ワンちゃんに麻痺が出て、歩けなくなるような重たい症状の場合、手術が必要になることが多いです。腰の辺りに椎間板ヘルニアが起こって、後ろ足が麻痺した場合、進行すると、後ろ足が全く痛みを感じなくなることがあります(深部痛覚の消失)。痛覚を消失してしまうと、手術をしても再び自力で歩けるようになる可能性は50%くらいと言われています。ですから、ワンちゃんが「突然後ろ足が立てなくなった」といった症状が出た場合、椎間板ヘルニアかもしれないので、なるべく早く相談していただけたらと思います。
この病気は写真のような「ミニチュア・ダックスフンド」に発生が多く、ミニチュア・ダックスフンドは、椎間板ヘルニアを起こすワンちゃんの50〜70%を占めると言われています。猫でもこの病気は存在しますが、発生は稀なようです。
*下のボタンをクリックすると、当院で行った椎間板ヘルニアの手術中の写真が出ます。
苦手な方はご覧にならないでください。
ペットロスを乗り越える
更新日 2017.11.16
こんにちは。今回は思うところがあって、以下の記事を載せようと思います。よかったら読んでください。 ペットを失った悲しみのことをペットロスと呼んでいます。家族同様に暮らした犬や猫が亡くなることは、飼い主さんに大きな喪失感をもたらします。中には、なかなか立ち直ることができず元気のなくなる人もいます。しかし、それでは亡くなった動物たちもきっと喜ばないことでしょう。
そこで、よく言われているペットロスの癒し方について。①涙を流すなど悲しい自分の感情を素直に表現する。②葬式や墓参りをするなどして、別れや死を受け入れる。③無理をせず、マイペースで過ごす。④知人や共感し合える仲間と動物の話をし、感情を整理する。⑤新しい犬や猫を迎え入れ、新たな生活を始めるなど。この他にも、悔いのない治療や看取りなど終末期に最善を尽くしたことが、飼い主さんの癒しになっていくそうです。
ともあれ、多くの笑顔と幸せを運んでくれた伴侶動物への感謝を忘れず、私たちはこらからも元気に生きていかねばと思います。
(庄東タイムス 平成28年10月31日号より)
尿管結石
更新日 2017.9.5
こんにちは。写真は、ワンちゃんの尿管を切開して取り出した結石(けっせき)です。「結石」とは、「臓器内にできる石のように固いもの」のことです。腎臓、尿管、膀胱などの尿路にできる「尿石」、胆囊の中にできる「胆石」などが結石の代表的なものです。尿管(腎臓から膀胱へ尿を輸送する管)の中に結石があると「尿管結石」という診断名になります。
人間は、尿管に結石がつまると、猛烈な痛みに襲われるようです。私の知人が、尿管結石を発症した時は、急にその場にうずくまって、立てなくなっていました。
では、ワンちゃん、ネコちゃんの場合はどんな症状が出るかと言うと、様々な症状が出ます。尿管は2本あるので、両側ともにつまると、おしっこが流れ出なくなり、かなり危険な状態になります。このワンちゃんは片側の尿管に写真のような結石が詰まっていましたが、「食欲がなくなった、吐いている」という症状で来院されています。血尿が出ることもありますが、明確な症状が認められないことも多いです。
検査した結果、尿管結石が原因と診断し、手術でつまった尿管から結石を摘出したら、ワンちゃんは元気になりました。
尿管結石を放置しておくと、つまった側の腎臓がそのうち機能しなくなります。ですから、早めに結石を取り除いて尿が流れ出るようにしてあげなくてはなりません。人間が尿管結石で激痛を伴うことを考えると、ワンちゃん、ネコちゃんも本当はかなり痛いのではないかと思います。そういう意味でも取り除いてあげられてよかったなと思います。
結石の種類は「シュウ酸カルシウム」と呼ばれるものでした。ワンちゃん、ネコちゃんの尿管につまる結石は、シュウ酸カルシウム結石が多いようです。この結石はできてしまうと、手術で摘出する以外は消すことが難しいです。この結石は、食事療法でも再発が完全に防げるわけではないので、獣医師と飼い主さんの頭を悩ませます。
眼圧測定
更新日 2017.7.7
こんにちは。当院でも写真に出ている機器を用いて眼圧(がんあつ)の測定が可能になりました。何のために眼圧を測るのかというと、「緑内障(りょくないしょう)」の診断のためです。
人間でも有名な病気である「緑内障」は、眼の中の水分の圧力(眼圧)が上昇し、視神経を圧迫し、激しい眼の痛みや失明を招く緊急性の高い病気です。ワンちゃんやネコちゃんの「緑内症」は、飼い主さんが気づきにくく、眼圧計で眼圧を測らないと適切な診断ができません。緑内障で眼圧が上がっていると、およそ24〜72時間で失明してしまい、失われた視力は戻りません。ですから早期発見、早期治療が大切なんです。日本のワンちゃんでは、特に高齢(7歳以上)の柴犬、シー・ズー、アメリカン・コッカースパニエルといった犬種に多く認められます。
「眼が赤い、眼をこする、左右の眼の大きさが違う」といった症状が見られたら、緑内障が潜んでいるかもしれません。このような時は、積極的に眼圧を測定することをお勧めします。ちなみに測定は短時間ですみ、痛みはありません。
お尋ね一問一答
更新日 2017.7.6
Q1.蚊が媒介するフィラリア症の症状は?
A1. 慢性経過では、心臓病を発症する、咳が出る、腹水がたまるなどの症状が出ます。急性経過では、寄生したフィラリアによって血管が詰まり、血尿や呼吸困難といった症状が出てきます。犬はもちろん、猫も発症し命に関わる病気ですから、動物病院の指導により薬で予防するのが最善策ですね。
Q2.耳ダニって何?
A2.ミミヒゼンダニと呼ばれる体長0.3〜0.4mm程度の小さなダニのことで、犬や猫の耳の中に寄生します。耳が痒くて掻きむしってしまうと、出血したり他の感染症を引き起こしたりするので、治療が必要ですね。
Q3.マダニが恐い理由は?
A3.マダニは、森や林、河原や公園の草むらなどに広く生息し、吸血した際に皮膚炎や犬の命に関わるバベシア症などを引き起こします。近年、マダニが媒介するウイルスの感染でヒトも亡くなっています。特に春と秋は要注意ですよ。犬や猫が外から戻ったらマダニが付着していないか、耳、腹、指の間など体全体を調べてください。現在では、薬による予防が普及しています。
(庄東タイムス 平成29年6月30日号より)
フィラリア症の予防を忘れずに
更新日 2017.3.31
今回は、私の過去の失敗談から。
9歳の時、私は待望の子犬を手に入れました。ところが、当時の家族には病気予防の知識が不足していたため、その愛犬をフィラリア症(犬糸状虫症)で亡くしてしまう結果となりました。物言えぬ不憫な動物の命を守りたいというその時の苦い思いが、私を獣医師の道へと駆り立てました。
さて、フィラリア症は、犬や猫に死をもたらす寄生虫による恐ろしい病気で、蚊が媒介することは周知の通りです。猫は犬ほど発症率が高くないためかあまり予防がなされていません。しかし、猫が発症すると、肺に激しい炎症を起こし、呼吸困難や突然死という極めて悲惨な末路を辿ることになります。
この病気は、犬猫共に定期的に駆虫薬を投与することで予防することができます。私達を癒し励ましてくれる可愛い家族を守るためには、病気を確実に防ぐことのできる方法を選びたいものですね。
(庄東タイムス 平成26年8月31日号より)
混合ワクチン
更新日 2017.2.28
こんにちは。「庄東タイムス」という地方紙に、2ヶ月に1回のペースで、当院がワンちゃん、ネコちゃんについての記事を書かせてもらっています。新聞社の方から、その記事を私自身のホームページに転載してもよいという許可をいただいたので、ブログのネタとして転載させていただきます。動物を飼われていない一般の方も読みやすいように、噛み砕いた表現を使用しているつもりです。ご容赦ください。
犬や猫には、それぞれにかかりやすい感染症があり、発症すると致命的になる場合も少なくありません。犬も猫も、母乳から免疫を授かっているうちは多くの感染症から守られているのですが、離乳する頃になるとウイルスによる感染症にかかる確率がぐんと高くなります。この感染症を予防するには、混合ワクチンの接種が効果的です。
現在、混合ワクチンの接種を受けていない犬や猫は、かなり多いようです。特にワクチンの接種がなされていない野良猫や捨て猫は増え続けていると言われ、一歩外に出ればそこはもうウイルスに汚染された環境です。したがって、屋外に出る人間や動物が、雑多に存在するウイルスを身体などに付けて屋内に運び入れてしまうことは防ぎようのないことなのです。「健康で長生きを望むなら、子犬・子猫の時期からの定期的なワクチンを」と言われる理由は、まさに、ここにあるのですね。
(庄東タイムス 平成29年2月28日号より)
胆嚢(たんのう)の病気
更新日 2017.2.14
「胆囊(たんのう)」という体の中の器官をご存知でしょうか?「胆囊」は、肝臓のすぐそばにある袋状の器官で、肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)を一時的に蓄え、必要に応じて腸に胆汁を出しています。犬も猫も人間も「胆囊」をもっています。
この胆囊にも様々な病気が起こることがあります。人間では、「胆石(たんせき)」といって、胆囊の中に結石ができる病気が有名ですよね。ワンちゃん、ネコちゃんにも胆石は存在しますが、今回はワンちゃんにたまに認められる「胆囊粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)」という病気について。難しい字を書きますが、簡単に言うと、胆囊の中にゼリー状の固い物質が溜まり、胆汁が流れ出なくなる病気です。進行すると肝臓が悪くなって黄疸が出たり、胆囊そのものが大きく破裂して体内に胆汁が漏れ出て腹膜炎になったりと生命が危ぶまれる病気です。
治療には手術で胆囊を摘出してしまうことが必要なのですが、この病気を発見した時に、ワンちゃんがかなり危険な状態に陥っていることも少なくありません。教科書的には手術をしても20%くらいが亡くなる可能性があると言
われています。ただし、早めにこの病気を発見して治療すれば助かる可能性がより高くなるようです。
このワンちゃんは、「最近、食欲がない、元気がない」とのことで来られ、検査してみたらこの病気があることが分かり、手術しました。元気になってよかったのですが、特に超音波の検査をしないとこの病気があるかどうか分かりません。
動物は喋らないので、飼い主さんからの問診や身体検査だけでは、得られる情報に限界があります。こういう病気を見逃さないためにも、費用はかかるのですが、精密検査をしていただくことは重要だと思います。
*下のボタンをクリックすると、当院で行った胆囊粘液嚢腫の手術中の写真が出ます。
苦手な方はご覧にならないでください。